花は芳しく

まずい。何がまずいってトイレがまずい。何がまずいってニオイがまずい。強烈すぎるのだ、桜の香りが。

大体どのご家庭にもあるであろう消臭芳香剤。私が人工的な臭いが苦手なこともあって、自宅では無臭の消臭剤しか使っていないのだけれど、会社では消臭芳香剤を使っている。使っていると言うより、会社に入った時点ですでにそれは存在していた。換気扇もないようなトイレだから、消臭剤があるのはまあ必然だろう。無かったら無かったで、別のニオイに悩まされることになるわけだから。

冒頭に戻るが、消臭芳香剤のニオイがどうにもきつい。桜の香りらしいのだけれど、桜ってこんな香りだったかしら。ニオイが鉄パイプ持って殴りかかってくるかのよう。桜って鉄パイプ持っていたかしら。トイレに入る前から、いや、もう思い出すだけでごめんなさい。これを書いているだけで、あのニオイが脳にこびりついているせいで、思い出すだけで体力がじわじわと減っている。ああ、降参です。参りました。だからその鉄パイプを下げてください。

なにが消臭で、なにが芳香だって? へえ、で、どれが芳しい香りだって?

流したい。蓋を開けて、桜を便器へ流したい。この出会いに感謝はなく、ただ別れだけを待つばかり。新しい彼を私は待ってるの。ああ、でも、そうすると新しい消臭剤を買いに行かなければならなくなるのだ。あと3ヶ月。あと3ヶ月待てばこの桜は枯れる。その前に私が枯れるか。戦いを。静かな戦いを繰り広げよう。会社で。